人事異動の季節になっています。
教職員の異動が各校種で行われます。その中で、最大の関心事が管理職の異動です。異動した管理職で一喜一憂しています。もちろん、すばらしい管理職もいます。
昨年度も校長が定年で退職すると教職員が思っていたら、再任用で残ってガッカリしたという話がありました。今年度も教頭が嫌なので3年間勤務した教員が異動を希望しましたが、その教頭が異動だったという話もあります。
先日、新潟日報で中学校の事案が2つ記事になりました。
1つは3月10日付の社会面の記事です。中越地方で新潟市に隣接する中学校で第三者委員会が報告書で2020年、1年生だった男子生徒に対して教員と同級生の発言を4件、いじめと認定しました。しかし、2年生の2学期以降、この生徒が不登校になったことについては、いじめとの因果関係を「不明」としました。前述の不登校直後に保護者が学校に相談し、2023年1月に第三者委員会の設置を教育委員会に設置を求めました。調査を開始し、今年の2月6日に報告書が提出されました。
この中学校では2021年4月、現在の校長が就任しました。この校長は保護者を始め外部との連絡は担任などにはさせず、校長だけがしています。新聞報道にはそのことの記事はありませんが、教職員間の人間関係に問題があることがみえてきます。
2つ目は3月12日付で、県教育委員会が11日に処分を発表した記事「人格否定の暴言 中学校教諭を処分」を掲載しました。同じく中越地方の中学校で、2023年3月に教諭が生徒を個別で生活態度などを指導した際に人格を否定するような暴言で怒鳴りつけました。この折に教頭も同席していたため、教諭、教頭、当時の校長(現在は中越教育事務所)に処分を出しました。
この2つは管理職の指導が問われています。「ときわ会」「公孫会」両方の中学校です。
教員に仕事をふり、やってみるように言っておいて、「違う」といって怒鳴る管理職に教職員は閉口し、やる気をなくしてしまいます。
子どもたちが大変な状況にもかかわらず、新しいことをいくつも行おうとする管理職がいます。若い教員の休職者も出しています。管理職は教職員から評判が悪いのです。
その学校で最大の岐路に立ったとき、きちんと生徒、教職員、保護者、地域に状況を説明するかどうかも管理職の質です。何もしないで時間だけが経過することを待っている管理職では困ります。
ある学校では生徒数が減り、正規教員と特別教育支援員が削減されます。不登校が各学年で多いので不登校加配がつくと思いましたが配置されません。管理職が人を増やせないことに教職員は絶望します。働く意欲を失ってしまうのです。
管理職は普段に細かいことを言う方や自分の主張だけする方は嫌われます。こういう管理職は早く異動してほしいと思ってしまいます。笑いが絶えず、教職員の話をよく聴き、よくみていて、困ったときや大変なときにしっかりと声をかけたり、支援してくれる管理職が歓迎されます。責任は管理職がとる姿勢を持っていることが教職員を安心させます。ここに管理職の本質が問われています。
新潟市の会計年度任用職員である図書館司書、特別支援教育支援員、教育業務支援員(用務員、調理員もいます)などは1年任期です。毎年、校長が継続か異動かを本人に伝えなくてはいけません。しかし、継続だと伝えない校長が多いのです。不安になった方は校長に聞きに行っています。教員とは違う勤務条件の方にしっかりと配慮できるかどうかも管理職の質といえます。
異動の時期だからこそ、管理職の質の違いが浮き彫りになります。
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文部科学省は小中学校の授業時間を見直し、学校の裁量を拡大する方向を検討しています。授業時間を5分間短くし、短縮分を各校が自由に使えるとしています。2027年に改定される次期学習指導要領への反映に向けて、秋には中央教育審議会に諮問する見通しです。
小中学校の授業時間は、学校教育法施行規則に「標準例」として示されています。文部科学省は小学校を40分、中学校を45分に変更することを構想しています。1958年の規則明示後、初めてとなります。
一方、年間の授業時間数を変えない方向です。現在、小学校4年以上と中学校は1015コマで、小学校では年間約760時間、中学校は約845時間が授業に充てられています。授業を5分短縮すると、小学校、中学校とも約85時間(5075分)の差が生まれ、各校が弾力的に運用できるとしています。背景には、子どもの学力や教育環境の地域間格差が広がっているとしています。各校が画一的な授業を横並びで実施しているだけでは対応は難しいと文部科学省はとらえ、裁量拡大によって、学校現場の創意工夫を促すねらいです。思考力育成のための探究活動、基礎学力定着のためのドリル学習などを各校の実態に応じて指導に生かすことを期待しています。
すでに横浜市などの小学校の一部は40分授業を行なっています。
この動きの中で、自由進度学習が流行し始めています。個人、集団の違いはありますが、単元につくる調べるタイプの学習課題を設定し、行なっています。内容は教科書通りが多く、話し合いで練り上げていくような単元ではなく、活動や作業が多い単元になっています。来年度から、東京渋谷区の全中学校は午後の授業を探究学習にします。まさに、裁量拡大によって学校が実践しているのです。しかし、学びの豊かさにはなっているのかは疑問といえます。
文部科学省の学習指導要領の改定の問題は先の学習指導要領の反省を分析して改定をしていません。そのために、突然、新しい内容が明示されているようになります。
文部科学省が背景にしている子どもの学力や教育環境の地域間格差が授業時間短縮による工夫でどうにかなるものではないといえます。新潟市の各区の地域や子どもの実態の違いをみても、教職員を増員し、丁寧な授業や教育活動を行なってゆく以外に方法はありません。
また、文部科学省は出口の高校入試、大学入試を変えないで、入口やその途中の学習内容や方法を変えてもどうにもならないのです。改定された最初は短縮時間分に何をするか先行校のマネをしますが、学習内容が多く、進度を気にしている学校では裁量拡大をしても入試対応になってゆくことは間違いありません。授業時間を短縮して、年間授業時間数を変えないことも拍車をかけます。
文部科学省は、子どもの規範意識が低い生徒や希死念慮、暴力行為の増加している中で、学校教育を改善していく道を示してもらいたいものです。
2024年度の文部科学省の予算案(一般会計)は5兆3384億円で、そのうち文教関係予算案は4兆563億円です。2023年度当初予算比で417億円の増額になっています。
公立小中学校の教職員の給与に充てられる義務教育費国庫負担金は1兆5627億円です。2023年度と比較して411億円増額していますが、ほぼ全額が物価上昇を受けた人事院勧告がプラス改定となったことによるものです。教職員の異常な長時間労働や教員不足が社会問題になっているなかで教職員定数はほとんど増えていません。
教職員の定数改善では、小学校高学年での教科担任制の推進1900人、小学校5年生の35人学級化3171人、教育課題対応の基礎定数化439人(通級指導744人、日本語指導122人、初任者研修116人減、自然減等311人減)、さまざまな教育課題への対応150人(中学校生徒指導・不登校特例校支援60人、離島・過疎地域含む小規模校支援20人、学校DX推進に向けた運営体制50人<事務職員10人、主幹教員10人、養護教員20人、栄養教員10人>、貧困等に起因する学力課題解消20人で5660人を計上しています。
このうち、不登校対応や教員の長時間労働改善に概算要求で400人増を求めていましたが、予算案では150人増におさえられました。ほかに公務員の定年引き上げによる特例定員による増員が4331人になり、定数改善は合計9991人になります。
一方、子どもの減少で「自然減」や学校統廃合による「合理化減」などで合計9926人の定数減を見込んでいます。定数増と定数減の差し引きではわずか65人増しかなりませんでした。
補習等のための指導員等派遣事業は121億円で、教員業務支援員(SSS)は2万8100人(昨年度当初比1万5150人増)、中学校学習指導員1万1000人(昨年度とほぼ同様)、新規の副校長・教頭マネジメント支援員1000人になります。
しかし、教員業務支援員は大幅な増員になっていますが、予算自体は減額されているために、配置時間や日数が調整される可能性が危惧されています。
不登校・いじめの対策等の推進は86億円を計上し、スクールカウンセラーを全公立小中学校に、スクールソーシャルワーカーを全中学校に配置します。
特別支援教育の充実のため、医療的ケア看護職員を4550人配置します。
中学、高校での部活動が教員の長時間労働の原因の一つになるなか、部活動の「地域クラブ活動への移行に向けた実証事業」は1億円増の12億円、「中学校における部活動指導員の配置支援」は1万6013人(昨年度当初比3461人増)ですが、4億円増の18億円にとどまり、移行がスムーズにゆくか疑問といえます。
子どもの教育を充実させることこそ大切になっています。現在の教育課題を解決するためには教育予算を増やして、教職員増しかないのです。